インピーダンス法による電圧降下の測定と保護接地の基礎知識

インピーダンス法による電圧降下の測定と保護接地の基礎知識

インピーダンス法と電圧降下で測る保護接地線の安全基準

着脱可能な保護接地線は、定格電流にかかわらず必ず25Aで試験しなければならないと思っているなら、それは誤りです。


この記事の3つのポイント
電圧降下法とは何か

電圧降下法はオームの法則(Z=V/I)を使い、保護接地線に交流電流を流してその両端電圧を測ることでインピーダンスを算出する方法です。

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試験電流の決め方

JIS T 0601-1では試験電流を「25A」または「定格電流×1.5倍」の大きいほうに設定します。定格が17A超の機器では25Aを上回ることもあります。

許容値と測定精度

着脱可能な保護接地線の許容インピーダンスは0.5Ω以下、非着脱の固定式は0.2Ω以下です。接触抵抗の影響を避けるため4端子法(ケルビン接続)が推奨されます。


インピーダンス法・電圧降下法の基本原理と医療現場での位置づけ

電圧降下法は、回路に電流を流したときに生じる「電圧の落ち込み(電圧降下)」を測定し、オームの法則 Z=V/I でインピーダンスを求める手法です。 直流法と交流法に大別されますが、保護接地線測定では50Hzまたは60Hzの交流電流を使用します。 交流を使う理由は、実際の使用環境で流れる電流の性質に合わせ、リアクタンス成分も含めた実効的なインピーダンスを評価するためです。 ctleec.sakura.ne(http://www.ctleec.sakura.ne.jp/2024/03/28/19-%E6%8A%B5%E6%8A%97%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%B8%AC%E5%AE%9A1/)


医療電気機器(ME機器)において保護接地線は感電事故を防ぐ最後の砦です。 電源電圧が変動・不足すれば機器が誤動作し、電圧降下が瞬間的であっても機器停止を招く可能性があります。 保護接地線のインピーダンスが高くなれば、故障時に筐体を経由して流れる異常電流が患者や術者に及ぶリスクが高まります。これが基本です。 bme-emc(https://www.bme-emc.jp/pdf/26no2Hanada.pdf)


測定方式 使用電流 特徴 主な用途
直流法 直流 抵抗成分のみ評価 純抵抗素子の測定
交流電圧降下法 50/60Hz 交流 Z(複素インピーダンス)を評価 保護接地線・ME機器安全試験
4端子法(ケルビン) 交流・直流どちらでも可 接触抵抗の影響を排除 低抵抗値の高精度測定


JIS T 0601-1:2017「医用電気機器 第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項」が根拠規格です。 国家試験でも頻出のため、臨床工学技士は本規格の数値を確実に把握する必要があります。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


保護接地インピーダンス測定の詳細(臨床工学技士向け解説)


インピーダンス法の試験電流・電圧降下の規定値と計算手順

JIS T 0601-1に基づく電圧降下法の試験電流は、次の式で決まります。 note(https://note.com/me_note_lab/n/n18085b931dde)


  • 試験電流 Itest = max(25A、定格電流 × 1.5)
  • 無負荷電圧:6V以下(安全確保のため低電圧に制限)
  • 通電時間:5〜10秒間
  • 周波数:50Hzまたは60Hz


具体例で整理します。定格10Aの機器なら1.5×10=15Aですが、25Aのほうが大きいため試験電流は25Aです。 一方、定格20Aの機器なら1.5×20=30Aとなり、25Aを上回るため試験電流は30Aになります。意外ですね。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


実際の計算手順は以下の通りです。


  1. 定格電流から Itest を決定する(上記の式を使用)
  2. 保護接地線に Itest を5〜10秒間通電する
  3. 電圧降下 V(ボルト)を測定する
  4. Z = V ÷ Itest でインピーダンスを算出する
  5. 許容値と比較して合否判定を行う


例えば定格10Aの機器(Itest=25A)で電圧降下が5Vであれば Z=5÷25=0.2Ωとなり、着脱可能な保護接地線の許容値0.5Ω以下を満たします。 計算式だけ覚えておけばOKです。 note(https://note.com/me_note_lab/n/n18085b931dde)


電気的安全性の測定(国家試験対応・計算例付き解説)


インピーダンス法の電圧降下における許容値と着脱可否による違い

保護接地線の許容インピーダンス値は、「着脱可能かどうか」によって異なります。 これが最大の落とし穴です。 note(https://note.com/me_note_lab/n/n18085b931dde)


種別 許容インピーダンス 根拠
着脱可能な保護接地線 0.5Ω 以下 JIS T 0601-1
固定式(非着脱)の電源コード 0.2Ω 以下 JIS T 0601-1


固定式のほうが許容値が厳しい(小さい)のは、接続点が少なく接地の信頼性が高い前提で設計されているからです。 着脱式はコネクタ接続部での抵抗増加が避けられないため、やや緩い設定になっています。つまり「固定式のほうが安全基準が厳しい」ということですね。 note(https://note.com/me_note_lab/n/n18085b931dde)


病院電気設備においても類似の基準が存在します。JIST1022:2018では、接地線の抵抗は無負荷電圧6V以下の交流電源で約25Aの電流を流して電圧降下法で測定したとき、0.1Ω以下とする規定があります。 ME機器単体の試験と病院設備の試験で許容値が異なる点に注意が必要です。 kikakurui(https://kikakurui.com/t1/T1022-2018-01.html)


定格10Aの機器(Itest=25A)で着脱可能な保護接地線が許容値内に収まる場合、電圧降下の上限は 0.5Ω × 25A = 12.5V ですが、無負荷電圧が6V以下に制限されているため実質的な上限は別途確認が必要です。 国家試験では「定格10Aの着脱可能な保護接地線の電圧降下の上限は?」という問いで0.2Ω × 25A = 5V が正解とされるパターンもあるため、問題文の条件(どちらの許容値を使うか)をよく読むことが大切です。 mgkca(https://mgkca.com/clinical-engineer/question/similview/f0830eb8-f659-4c22-8325-d6b4bf36db1d?page=2)


国家試験「医用機器安全管理学」保護接地測定の数値まとめ


4端子法(ケルビン接続)でインピーダンス電圧降下測定の精度を上げる理由

低抵抗値の測定では、プローブと測定対象の接触部分で生じる「接触抵抗」が誤差の主な原因になります。 保護接地線のインピーダンスは0.5Ω以下という極めて小さい値であるため、プローブ2本で電流と電圧を同じ端子から測る通常の2端子法では測定誤差が無視できません。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


4端子法(ケルビン接続)は電流端子と電圧端子を分離し、電圧測定ポイントに電流をほとんど流さない構成にします。 電圧計の入力インピーダンスが十分に高ければ、電圧端子側の接触抵抗は実質的に測定値に影響しません。これは使えそうです。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


実際の手順ポイントをまとめます。


  • 電流端子(I+、I−)と電圧端子(V+、V−)の4本を別々に接続する
  • 電圧端子は測定したい区間の両端に正確に当てる
  • 接触部のゴミや酸化膜を除去してから測定する
  • 通電時間5〜10秒を厳守し、熱による抵抗変化を避ける


臨床工学技士として保守点検を行う際、測定器の端子構成が2端子か4端子かを事前に確認することが重要です。市販の電気的安全性測定器(例:菊水電子工業のモデル3156など)は4端子法に対応した設計になっているものが多く、保護接地線の定期点検に適しています。 4端子法が条件です。 kikusui.co(https://kikusui.co.jp/kikusupport/%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%8E%A5%E5%9C%B0%E6%A5%B5%E5%8F%8A%E3%81%B3%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%B0%8E%E4%BD%93%E7%AB%AF%E5%AD%90%E3%81%A8%E7%AD%90%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%8E%A5%E5%9C%B0%E7%AE%87/)


医療従事者が誤解しやすい:インピーダンス電圧降下法の測定でよくあるミスと対策

電圧降下法の測定で現場でよく起きるミスは、「試験電流を一律25Aと思い込んで定格電流の1.5倍計算を省略してしまう」ことです。 定格電流が17Aを超えるME機器(例:大型透析装置など)では1.5倍が25Aを超えるため、試験電流が変わります。見落とすと測定条件が不適切となり、安全性評価が無効になります。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


もう一つのよくあるミスは「直流を使って測定してしまう」ことです。 直流法は抵抗成分のみを評価するため、コイル成分(インダクタンス)やコンデンサ成分(キャパシタンス)を含む実際の接地回路のインピーダンスを正確に反映しません。JIS T 0601-1は明確に50/60Hzの交流電流を規定しています。 直流法は原則NGです。 ctleec.sakura.ne(http://www.ctleec.sakura.ne.jp/2024/03/28/19-%E6%8A%B5%E6%8A%97%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%B8%AC%E5%AE%9A1/)


さらに注意が必要なのは測定時の環境です。 bme-emc(https://www.bme-emc.jp/pdf/26no2Hanada.pdf)


  • 病棟内の電源電圧変動が測定結果に影響する場合がある
  • 接地線の接続部(コネクタ・端子台)の汚れや腐食が抵抗値を押し上げる
  • 測定器のキャリブレーション(校正)期限が切れていると数値の信頼性がない
  • 通電時間が5秒未満では安定した値が得られないことがある


定期保守点検での記録管理も重要なポイントです。測定値が許容値内であっても、前回測定値からの変化量(トレンド)を確認することで、接地線の劣化を早期に検知できます。 数値の絶対値だけでなく、経時変化の把握が安全管理の質を高めます。測定履歴の記録は必須です。 bme-emc(https://www.bme-emc.jp/pdf/26no2Hanada.pdf)


保護接地線の点検頻度については施設ごとのルールに従う必要がありますが、JIS T 0601-1に基づく電気的安全性点検は、修理・改造後と定期的(少なくとも年1回が推奨される施設が多い)に実施されます。 点検頻度の根拠を記録に残しておくと、医療機器安全管理責任者への報告時に説明責任を果たしやすくなります。 clinicalengineer.sakura.ne(http://clinicalengineer.sakura.ne.jp/cn3/cn95/corner1988/pg2370.html)


病院内の電磁環境測定:電源および接地についての専門論文(一般社団法人日本生体医工学会)


医用電気システムの安全基準(JIS T 0601-1-1)保護接地接続の試験条件まとめ