営業外損益区分認識基準の実務ポイント

営業外損益区分認識基準の実務ポイント

営業外損益区分の認識基準

営業外損益区分認識基準のポイント
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本業との区分基準

定款に記載された事業目的による判断が基本となります

📊
経常性の判断

一時的ではなく継続的に発生する取引を営業外損益に分類

💱
為替差損益の処理

FX取引や輸出入業務から生じる為替変動の影響を適切に分類

営業外損益区分の基本的な認識基準

営業外損益の認識基準における最も重要な要素は、本業以外の活動で生じた損益であることです。企業会計原則では、営業外損益を「受取利息及び割引料、有価証券売却益等の営業外収益と支払利息及び割引料、有価証券売却損、有価証券評価損等の営業外費用とに区分して表示する」と定められています。
営業外損益の区分判断において、経常的に生じる性質のものという条件が重要です。つまり、特定の期にだけ生じる一時的なものではなく、継続的に発生する可能性がある取引を営業外損益として処理します。
具体的な認識基準として、以下の項目が挙げられます。

  • 財務活動に関する損益:借入金の利息、預金利息、有価証券の売却損益
  • 投資活動に関する損益:株式配当金、有価証券評価損益
  • その他の付随的損益:為替差損益、雑収入、雑損

営業外損益区分における定款目的の重要性

営業外損益の区分において、企業の定款で「目的」として定めている事業が判断の基準となります。本業とは法人の定款で「目的」として定めている事業を指し、この定義から外れる活動によって生じた損益が営業外損益として区分されます。
例えば、飲食店の場合、店で客に料理を提供することが定款上の目的であるため、料理の材料費や店のテナント料、人件費、広告費などは営業損益に分類されます。一方、店で料理を提供すること以外で生じる収益や費用は営業外損益となります。
定款目的による区分判断の具体例。

  • 製造業:製造販売が本業のため、有価証券投資による配当金は営業外収益
  • 証券会社:有価証券の売買が本業のため、有価証券売却損益は営業損益
  • 小売業:商品販売が本業のため、不動産賃貸収入は営業外収益

この区分は業種によって大きく異なるため、各法人が事業内容と照らし合わせて適切に判断する必要があります。

営業外損益区分の実務における重要な論点

営業外損益の実務処理において、収益認識基準の適用が重要な論点となっています。2021年4月から適用された収益認識基準により、営業外損益の区分や表示方法にも影響が生じています。
実務上重要なポイント。

  • 総額表示の原則:費用と収益を直接相殺することは原則として禁止
  • 重要性による区分:上場企業は営業外損益の総額の10%超の項目は別掲が必要
  • 継続性の原則:一度採用した区分基準は継続的に適用する必要

また、国際会計基準との相違点も注意すべき論点です。国際会計基準タクソノミでは、日本基準における営業損益、営業外損益、特別損益の区分に相当するものがありません。これにより、グローバル企業では報告書の作成において追加的な配慮が必要となります。
FX取引に関連する企業では、為替差損益の処理が特に重要です。輸出入業務から生じる為替差損益は、本業に直接関連する場合でも営業外損益として処理するのが一般的です。これは為替変動が企業の本来的な営業活動とは独立した要因によるものと考えられるためです。

営業外費用と営業外収益の相互関係

営業外損益は、営業外収益から営業外費用を差し引いて算出されます。この計算構造により、企業の経常利益に直接的な影響を与えるため、財務分析において重要な指標となります。
営業外収益の主な項目。

  • 受取利息:預金や貸付金から生じる利息収入
  • 受取配当金:保有株式からの配当収入
  • 有価証券売却益:投資有価証券の売却による利益
  • 為替差益:外貨建取引による為替変動利益
  • 雑収入:補助金、助成金、法人税還付など

営業外費用の主な項目。

  • 支払利息:借入金に対する利息負担
  • 有価証券売却損:投資有価証券の売却による損失
  • 有価証券評価損:保有株式の時価下落による損失
  • 為替差損:外貨建取引による為替変動損失
  • 創立費・開業費:会社設立や営業開始の準備費用

特に借入金の利息負担が大きい企業では、営業利益が高くても経常利益が減少するリスクがあります。このため、営業外費用の管理は企業の収益力を正確に評価するうえで重要な要素となります。

営業外損益区分における特別な処理事例

実務において、営業外損益の区分判断に迷いやすい特別な事例があります。これらの事例を適切に処理することで、財務諸表の信頼性を高めることができます。

 

長期請負工事における特殊処理では、販売費及び一般管理費を適当な比率で請負工事に配分し、売上原価及び期末たな卸高に算入することができます。この処理により、営業外損益との区分がより複雑になる場合があります。
グローバル企業の為替リスク管理では、為替変動による大幅な損益が発生することがあります。過去には営業利益がマイナスであったにも関わらず、為替レートによる差益で多額の営業外収益が発生し、経常利益がプラスに転じた事例もありました。
従業員の横領損失に係る損害賠償請求権の取り扱いも特殊な論点です。最高裁判決では、このような損失の収益認識基準について特別な考慮が必要とされています。
持分法投資損益の処理においても、営業外損益との区分が問題となります。関連会社への投資が本業に密接に関連している場合でも、一般的には営業外損益として処理されることが多いです。
デリバティブ取引の評価損益については、ヘッジ会計を適用しない場合、時価評価による損益が営業外損益として計上されます。FX関連企業では、この処理が損益に大きな影響を与える可能性があります。
これらの特殊事例における適切な判断には、企業の事業内容、取引の性質、継続性、重要性などを総合的に考慮する必要があります。また、監査人や税務署との事前相談により、処理方法の妥当性を確認することも重要です。