

地域連携パスを使っていても、厚生局への事前届出がなければ1点も算定できません。
地域連携クリティカルパス(地域連携パス)は、急性期病院から回復期病院を経て自宅復帰まで、地域内の複数の医療機関が共有する治療計画書のことです。 患者がどの医療機関を受診しても一貫した治療が受けられるよう、各施設の役割と治療スケジュールをあらかじめ明示します。 note(https://note.com/carebook/n/n0ed478259861)
診療報酬上の評価は、2006年(平成18年度)の診療報酬改定でスタートしました。 最初の対象疾患は大腿骨頸部骨折のみで、「地域連携診療計画管理料」と「地域連携診療計画退院時指導料」が新設されたのが始まりです。 2008年には脳卒中が追加対象になり、その後がん領域へも拡大されてきました。 iryogakkai(https://iryogakkai.jp/2014-68-09/442-4.pdf)
つまり、制度の歴史は20年近くになります。
医療機関間で診療情報が共有されている体制そのものを評価する仕組みとして設計されており、単にパスを使うだけでなく、「情報を共有し、計画に基づいて治療した」という実績が算定の根拠になります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001dlb2-att/2r9852000001dlfp.pdf)
地域連携パスに参加する医療機関は大きく3つの役割に分かれており、算定できる診療報酬はそれぞれ異なります。 seirei.or(https://www.seirei.or.jp/hamamatsu/media/1-3.pdf)
| 施設の役割 | 算定できる加算・料 | 点数 |
|---|---|---|
| 急性期病院(計画管理病院) | 入退院支援加算1+地域連携診療計画加算 | 600点+300点=900点 |
| 連携病院(回復期病院など) | 地域連携診療計画加算 | 300点 |
| 診療所等(連携医療機関) | 地域連携診療計画加算 | 50点 |
意外ですね。
急性期病院が最大900点を算定できる一方で、診療所は50点にとどまります。 これは地域連携パスの運用コストを急性期側が多く担っているという考え方が背景にあります。 seirei.or(https://www.seirei.or.jp/hamamatsu/media/1-3.pdf)
がん領域では点数体系がやや異なります。がん診療連携拠点病院が「がん治療連携計画策定料 750点」を、連携医療機関(かかりつけ医)が「がん治療連携指導料 300点」を算定する仕組みです。 gifugan(https://gifugan.net/clinical-pass-for-co-medical/)
算定漏れが起きやすいのが診療所側です。
連携医療機関は患者の診療状況を計画策定病院へ文書で報告した場合にのみ指導料が算定できます。 報告書の写しを診療録に貼付することも必須であり、この記録を残していないと後の個別指導で指摘を受けるリスクがあります。 gh.opho(https://www.gh.opho.jp/medical/3/1.html)
加算が算定できるのは退院時または転院時の1回限りです。 この点を見落とし、継続的に算定しようとするケースもあるため注意が必要です。 note(https://note.com/carebook/n/n0ed478259861)
地域連携診療計画加算を算定するには、算定を開始する月の前月までに地方厚生局への施設基準の届出が必要です。 これが届出なしに算定した場合、返還が求められる可能性があります。 ishikawa-heart(https://www.ishikawa-heart.com/medical/doc/book_manual.pdf)
届出が必要な書類は施設基準によって異なりますが、基本的には以下の3点が求められます。 kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/r8-2-082.pdf)
- 特掲診療料の施設基準に関する届出書
- 地域連携診療計画加算に関する届出書
- 地域連携診療計画書(疾患別の様式)
例外があります。
脳卒中や大腿骨頸部骨折の地域連携パスを既に届け出ている施設が、心不全などの新規疾患に対応する場合は、改めて届出が必要です。 「以前の届出があるから大丈夫」と思い込んでいると、算定根拠がない状態になるため注意が必要です。 ishikawa-heart(https://www.ishikawa-heart.com/medical/doc/book_manual.pdf)
がん領域では、計画策定病院(がん診療連携拠点病院)が施設基準の届出を行う際に、連携医療機関の届出を代わりに一括して行うことも可能な仕組みが平成24年度以降に設けられています。 連携医療機関側の事務負担を減らす上でこの制度は使えそうです。 gan-portal.metro.tokyo.lg(https://www.gan-portal.metro.tokyo.lg.jp/medical/critical-path.html)
地域連携パスの算定ルールは疾患によって細かく異なります。疾患ごとに料名・点数・算定タイミングが変わることを覚えておく必要があります。
🦴 大腿骨頸部骨折の場合
平成18年度改定で最初に診療報酬上の評価が行われた疾患です。 計画管理病院(急性期病院)は地域連携診療計画管理料として過去に900点が設定されており、現行制度では入退院支援加算との組み合わせで算定する形に移行しています。 回復期病院は転院受け入れ時に退院時指導料として対応する体系です。 ihep(https://www.ihep.jp/wp-content/uploads/current/report/study/14/h21-3.pdf)
🧠 脳卒中の場合
🎗️ がんの場合
がん領域のパスは、「がん治療連携計画策定料(750点)」と「がん治療連携指導料(300点)」という独自の点数体系です。 1がん腫につき初回連携のみ対象であり、第2以降の連携先医療機関には適用されません。 kcch.kanagawa-pho(https://kcch.kanagawa-pho.jp/medical/cooperation-path.html)
これは重要な条件です。
例えば乳がんで連携パスを開始した後、別の医療機関に転院した場合、その転院先では「がん治療連携計画策定料」の起算が改めてできないケースがあります。また、報告書の送付だけでは算定できず、必ず患者の受診時に算定する必要があります。 この条件を見落としたまま算定すると、不正請求と判断されるリスクがあります。 kcch.kanagawa-pho(https://kcch.kanagawa-pho.jp/medical/cooperation-path.html)
参考資料:神奈川県立がんセンター がん地域連携パス診療報酬算定の手続きについて
神奈川県立がんセンター:がん地域連携パス診療報酬算定のための手続き
① 連携医療機関の報告頻度が低下しやすい
かかりつけ医側の「がん治療連携指導料 300点」は月1回が上限です。 この点数は比較的低く、文書作成・送付・記録の手間に対して採算が合わないと感じる診療所も少なくありません。結果として報告頻度が落ち、拠点病院側は患者の状態を把握しにくくなります。 gh.opho(https://www.gh.opho.jp/medical/3/1.html)
コストと手間の問題です。
② 急性期病院と回復期病院の情報共有ツールが統一されていない
地域連携パスは紙ベースで運用されることが多く、電子カルテとの連携が取れていない施設では手入力の二重作業が発生します。 これが担当者の負担増につながり、パスの活用が形式的になる一因です。入退院支援クラウド(CAREBOOKなどのサービス)を活用することで、この情報入力の重複を軽減できます。 note(https://note.com/carebook/n/n0ed478259861)
③ 患者の同意取得がハードルになるケース
診療報酬算定の前提として、患者への説明と同意が必要です。 特にがん患者では、連携パスの説明タイミングが精神的負担を与える可能性もあり、現場の医師や看護師が積極的に案内しにくいという声もあります。同意書の取得と診療報酬が連動している以上、患者対応のスキルが算定実績に直結します。 kyushu-cc.hosp.go(https://kyushu-cc.hosp.go.jp/files/000230962.pdf)
これは見過ごされやすい課題です。
地域連携パスの算定実績を向上させるには、施設内のフロー整備だけでなく、患者説明の標準化と電子化によるコスト削減が両輪として必要です。担当の医療ソーシャルワーカー(MSW)や事務職員との連携体制を見直すことが、算定漏れの防止にも直結します。 wam.go(https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiiryokeiei/jisen/jisen006.html)
参考資料:WAM NET「地域連携の経営的側面」─ 入退院支援加算の算定件数と人件費の関係を数字で解説
WAM NET:地域連携の経営的側面(入退院支援加算の収益試算)
参考資料:日本クリニカルパス学会誌「がん地域医療連携クリニカルパスにおける課題と今後のあり方」