
MOTIONGALLERYは、2011年7月に東京藝術大学大学院に在籍していた大高健志氏によって設立された日本最大級のクラウドファンディングサイトです。「クリエイターの支援」に特化したプラットフォームとして、アート、デザイン、音楽、ダンス、映画、本などのクリエイティブな活動を中心に支援しています。
設立の背景には、大高氏が藝大在籍中に「モノづくりとおカネ」の関係を健全なものにしたいという思いがありました。日本のアート環境において、若手からベテランまで多くのクリエイターが資金繰りに困難を抱えており、資金不足によりプロジェクトが頓挫することも少なくありません。そうした状況を改善するために、クリエイターと支援者を直接つなぐプラットフォームとして誕生したのです。
2024年で設立から13周年を迎え、これまでに数多くのクリエイティブなプロジェクトを支援してきました。また、アメリカの大手クラウドファンディングサイト「Indiegogo」と提携するなど、国内だけでなく海外にも活動拠点を広げるグローバルな展開も進めています。
MOTIONGALLERYには、大きく分けて2種類の資金調達方法があります。
MOTIONGALLERYの最大の特徴の一つは、業界最安水準の手数料率です。コンセプト・ファンディングの場合、手数料はわずか10%となっています。これは他の主要クラウドファンディングサイトと比較しても非常に低い水準です。
【主要クラウドファンディングサイトの手数料比較】
この低い手数料率は、クリエイターにとって大きなメリットとなり、より多くの資金を実際のプロジェクト実行に充てることができます。特に小規模なプロジェクトや、予算の限られたクリエイターにとって、この差は非常に重要です。
MOTIONGALLERYは設立から4年間で約630を超えるクリエイティブなプロジェクトを支援し、支援者(コレクター)数は約3.5万人、応援資金は総額で約4.1億円に達しました(2015年時点)。プロジェクトのカテゴリー別では、このうち約2億円が映画で全体のほぼ半分を占めています。
特に注目すべき成功事例としては、以下のようなプロジェクトがあります。
さらに、佐々木芽生監督のクジラをテーマにした最新ドキュメンタリーは2,300万円を突破し、当時の最高記録を更新するなど、目標金額を大きく上回る達成率を記録するプロジェクトも数多く生まれています。
MOTIONGALLERYから生まれたプロジェクトの中には、世界の映画祭で受賞する作品も数多く出てきており、クリエイティブな作品の誕生と成功を支える重要なプラットフォームとなっています。
MOTIONGALLERYでプロジェクトを立ち上げるプロセスは、比較的シンプルで迅速です。以下に、プロジェクト投稿から公開までの手順を詳しく解説します。
1. プロジェクトの投稿
まず、MOTIONGALLERYの仕組みを確認し、プロジェクト概要をMOTIONGALLERY社に投稿します。審査結果や詳細の説明はメールでやりとりし、問題なければ次のステップに進みます。
2. アカウント作成と必要書類の送付
MOTIONGALLERYのアカウントを作成します。このアカウントがそのままプロジェクトの「プレゼンター」として表示されるため、必要に応じて個人名ではなく委員会などのグループ名にすることも可能です。
作成したアカウントと、送付された書類に必要事項(銀行振込先など)を記入して、身分証明書(免許証のコピーなど)をMOTIONGALLERY社に送ります。
3. 基本設定の登録
ここから、MOTIONGALLERYのWebサイトにプロジェクト用のページが作成され、プレゼンターのアカウントでログインし、情報を登録していきます。
まず、タイトルや、キービジュアルとなる画像や動画、概要やカテゴリー、プロジェクトの活動エリア、目標金額、募集期間を設定します。動画を制作しているプロジェクトが多いですが、必須ではありません。
4. 原稿作成
次に、プロジェクトページの本文を作成します。Webページ上で編集を行えますが、HTMLを理解している人は、別途HTMLで原稿を用意して、「<>」ボタンからHTMLコードを取得・設定する方が効率的な場合もあります。
5. リターンの設定
最後に、支援者への特典となるリターンを設定します。「リターン」は「特典」をまとめるグループで、リターンを追加し、さらにリターンに特典を追加していきます。特典ごとに支援者(コレクター)の住所が必要かも設定できます。
6. プレビューと審査
以上で完了し、審査を申請します。審査結果はメールで受け取り、必要であれば再度修正します。プレビュー機能も用意されており、MOTIONGALLERYにどのように掲載されるか確認できます。メールで招待することで、プレビュー画面を他の人に見せることも可能です。
7. 公開
審査が通れば、プロジェクト掲載の通知がメールで届き、プロジェクトの開始日に公開されます。開始日は審査申請日の7日後以降、終了日は平日にする必要があります。ただし、審査が早く終われば、申請日の7日後よりも早めてもらえる場合もあります。
審査は通常7営業日程度とされていますが、実際には金曜日に投稿して翌週の火曜日午前0時にはプロジェクトを公開できた例もあり、準備が整っていれば比較的スピーディーに開始できる可能性があります。
MOTIONGALLERYは2024年7月に設立13周年を迎え、クラウドファンディングの可能性をさらに広げるための新たな取り組みを始めています。その一環として「MOTION GALLERY's Fellowship」を立ち上げ、28名の各分野の専門家が「フェロー」に就任しました。
大高健志代表は、MOTIONGALLERYの今後について「クラウドファンディングというワード自体がバズワードになってしまうと、本来的な意味を見失なった使い方が出てきてしまう危惧もあります。クラウドファンディングは小手先の『金集め』ではなく、ファンを巻き込んだクリエイティブな制作手法であるという本来の価値を余すことなく伝えていきたい」と述べています。
また、「チャレンジングな作品が1つでも多く誕生するために、1プロジェクトで1000万円以上が集まりやすくなるように、MOTIONGALLERYもチャレンジをしていきたい」と、より大規模なプロジェクトの支援にも力を入れる意向を示しています。
MOTIONGALLERYが目指しているのは、単なる資金調達の場ではなく、クリエイターと支援者が共感でつながり、新しいクリエイティブが生まれる場所です。まだ世にない作品をつくろうとする人たちや、社会の課題を自分ごととして捉えて行動を起こす人たちが、クラウドファンディングを通じて新たな仲間と出会い、活動を広げていくことを支援しています。
そして、そのプロセスの中から次のプレイヤーが生まれ、プロジェクトひとつひとつが、世界を少しずつクリエイティブで多様な場所に変えていく――MOTIONGALLERYはそのような好循環を生み出すプラットフォームとして、今後も発展を続けていくでしょう。
クラウドファンディングの市場は年々拡大しており、MOTIONGALLERYのような専門性の高いプラットフォームの役割はますます重要になっています。特に日本のクリエイティブ産業において、従来の資金調達方法では実現が難しかったプロジェクトが、クラウドファンディングによって日の目を見るケースが増えています。
MOTIONGALLERYは、これからも「クリエイターの支援」という原点を大切にしながら、クラウドファンディングの可能性を広げ、日本のクリエイティブシーンをより豊かにしていくことでしょう。
クラウドファンディングの進化形として、MOTIONGALLERYがブロックチェーン技術やNFT(非代替性トークン)と融合する可能性も注目されています。これは検索上位には見られない独自の視点ですが、クリエイティブ産業の資金調達において重要な展望となるでしょう。
ブロックチェーン技術を活用することで、支援者はプロジェクトに資金を提供するだけでなく、将来的な権利や収益の一部を得ることができるようになります。例えば、映画プロジェクトの支援者が、その映画の収益の一部を受け取る権利をトークン化して保有するといった仕組みです。
MOTIONGALLERYのようなクリエイティブ特化型のプラットフォームがこうした技術を取り入れることで、以下のようなメリットが生まれる可能性があります。
すでに海外では、Indiegogoなどの大手クラウドファンディングプラットフォームがブロックチェーン技術を取り入れた新しいモデルを模索しています。MOTIONGALLERYもIndiegogoと提携関係にあることから、今後このような革新的な資金調達方法を取り入れる可能性は十分にあります。
クリエイティブ産業の資金調達において、従来のクラウドファンディングとブロックチェーン技術の融合は、クリエイターと支援者双方にとって新たな価値を生み出す可能性を秘めています。MOTIONGALLERYがこうした技術革新をどのように取り入れていくのか、今後の展開に注目です。