
金融機関におけるオンサイト検査は、原則として無予告で実施される立入検査形式が採用されています。検査の着手段階では、主任検査官が検査対象先の責任者に対し、検査証票・検査命令書を提示し、検査の権限及び目的を明確に告知することが定められています。
この際、検査官は以下の重要事項を説明する義務があります。
特に注目すべきは、検査には受任義務が存在することです。「時間がない」「担当者がいない」といった理由で検査を拒否することは認められず、金融機関は即座に検査に応じる必要があります。
検査対象となる資料は非常に広範囲に及び、机の中の書類から電子メールに至るまで、すべてが検査の対象となります。この包括的な調査範囲は、金融機関の実態を正確に把握するために設けられた重要な仕組みです。
検査の中核を成すのが検証プロセスです。このプロセスでは、**「双方向の議論」**を重視した検査手法が採用されており、従来の一方的な指摘方式から大きく転換しています。
検証段階では以下の手順で進行します。
検査期間は数週間から数か月にわたることが一般的で、進捗に応じて整理表等による問題点の整理が行われます。この段階で、金融機関側の見解や事実関係の確認が重要となります。
現代の検査では、立入検査前に当局が情報を分析し、あらかじめ検査範囲を絞り込む方式が採用されています。これにより、金融機関のオンサイト負担が軽減される一方、オフサイトでの情報提供がより重要になっています。
検査の重要な局面として位置づけられるのが意見交換です。この段階では、検査対象先の責任者等の出席を求め、主任検査官が臨店検査の結果として認識した問題点について口頭での評価伝達が行われます。
意見交換における特徴的な要素。
この意見交換プロセスは、検査の透明性と公平性を確保するための重要な仕組みです。金融機関側は、検査班の評価に対する自らの認識を示す機会が与えられ、事実関係について確認・説明することができます。
重要なのは、この段階での評価は「検査班としての評価にすぎず、証券監視委又は財務局等としての最終的な意見ではない」ことが明確に示される点です。これにより、後続する正式な検査結果通知との区別が明確化されています。
検査の終了段階では、エグジットミーティングと呼ばれる立入終了手続きが実施されます。この手続きは検査の総括として重要な意味を持ちます。
終了手続きの主要な構成要素。
検査終了後はオンサイト検査モニター制度が活用されます。これは検査の品質向上と透明性確保を目的とした制度で、検査を受けた金融機関からのフィードバックを収集する仕組みです。
さらに、オフサイト検査モニターも並行して実施されます。これはアンケート方式で行われ、検査結果通知から10日以内という期限が設けられています。この期間設定は、検査体験がまだ記憶に新しいうちに、正確なフィードバックを得ることを目的としています。
検査プロセスの最終段階が検査結果通知です。この通知は審査標準処理期間として3ヶ月が設定されており、厳格な時間管理の下で行われます。
検査結果通知の特徴的な仕組み。
この段階で重要なのは、検査部局最終見解の確定です。これまでの暫定的評価とは異なり、当局としての正式な判断が示されることになります。
検査結果通知には、改善を要する事項だけでなく、ベスト・プラクティスへの対応促進も含まれることがあります。これは従来のミニマム・スタンダード遵守要請を超えた、より高度な経営管理水準への誘導を意味します。
また、検査結果に不服がある場合の意見申出制度についても、この段階で改めて説明されます。金融機関は検査結果通知後も、正当な手続きを通じて意見を申し出る権利が保障されています。