持分プーリング法とパーチェス法の基本概念と廃止された理由

持分プーリング法とパーチェス法の基本概念と廃止された理由

持分プーリング法とパーチェス法の基本概念

企業結合の会計処理方法
📊
持分プーリング法

資産・負債を帳簿価額のまま引き継ぐ対等な統合手法

💰
パーチェス法

資産・負債を時価で評価して取得する買収手法

⚖️
会計基準の統一

国際的な基準統一により持分プーリング法が廃止

企業結合の会計処理には、持分プーリング法とパーチェス法という2つの主要な方法があります。これらの手法は、企業の合併や買収における会計処理の根本的なアプローチが異なっており、結果として財務諸表に大きな影響を与えます。
持分プーリング法の特徴 🔄
持分プーリング法とは、すべての結合当事企業の資産、負債及び資本を適正な帳簿価額で引き継ぐ会計処理方法です。この手法では、合併会社が被合併会社の資産および負債をすべて帳簿価額のまま引き継ぎます。また、資本についても、資本金、資本剰余金、利益剰余金といった内訳が原則としてそのまま引き継がれるという特徴があります。
持分プーリング法は、合併によって他の会社を取得したのではなく、合併当事会社の持分が結合したと考えられる場合に適用されるのが合理的とされています。この方法では、簿価のまま資産・負債を合算するため、「プール」(溜める)から転じて、両社の持分を一か所に集めるというイメージで理解できます。
パーチェス法の仕組み 💼
一方、パーチェス法とは、結合当事企業のうち支配を獲得する「取得企業」を決定し、取得企業の取得原価については支払対価の時価にて算定するとともに、取得企業の資産・負債及び資本については簿価を引き継ぎ、被取得企業の資産・負債については時価により計上する会計処理方法です。
パーチェス法では、被合併会社の諸資産、諸負債を簿価ではなく時価で購入(purchase)するアプローチを取ります。購入するということは、対価を払ってあるものを得るということであり、吸収合併の場合、吸収する側の会社が対価(吸収される側の会社の株主に対価として交付する新会社の株式)を払って、吸収される会社の「総資産-総負債」を購入することになります。

持分プーリング法の適用条件と判定基準

持分プーリング法の適用には厳格な条件が設けられていました。わが国の企業結合会計では、「持分の結合」に該当する場合に限り、持分プーリング法の適用が認められていました。
判定の3要件 📋

  • ①対価が議決権のある株式であること
  • ②合併後の議決権比率が45:55~55:45であること
  • ③他の支配関係が無いこと

これらの要件をすべて満たした場合は「持分の結合」と判定され、それ以外についてはすべて「取得」と判定されました。特に③については、結合企業の株式の交換比率(合併比率)が、それぞれの株価に基づいて算定した交換比率と一定以上乖離し、多額のプレミアムが発生している場合には要件を満たさないこととされていました。
現金を対価とした場合には持分プーリング法はできませんので、株式交換が前提条件となっていました。これは、現金を相手に渡すと資源の喪失があるのに対し、株式の交換の場合は資源の喪失がなく、被買収側の株主もリスクと便益に参加し続けるためです。

パーチェス法における「のれん」の発生メカニズム

パーチェス法において重要な概念が「のれん」です。対価として交付する株式発行額と、時価評価された「諸資産-諸負債」にギャップが生じることがあり、このギャップを「のれん」といいます。
のれんの特徴 💡

  • 被取得企業に対する対価が公正価値を超過する部分として計上
  • パーチェス法特有の現象(持分プーリング法では発生しない)
  • 有税償却が企業に著しい負担をもたらす可能性

例えば、ExxonMobilがパーチェス法を使用した場合、120億ドル以上の税負担を要したとされており、これがパーチェス法の大きなデメリットとして認識されていました。持分プーリング法では簿価で引き継ぎを行うことからのれんは生じないため、この点で企業にとって有利な会計処理方法とされていました。
FASBは「パーチェス法」により、株主が買収企業の被買収企業を取得した際の実際に必要とされたコスト及びこの買収が株主に与えた得失を将来的に確認することが可能になるとしています。

持分プーリング法とパーチェス法の財務への影響比較

両手法は財務諸表に大きく異なる影響を与えます。持分プーリング法はパーチェス法と比べて合併後に利益が出やすく、簿外資産も発生しやすいなどの特徴があります。
持分プーリング法の財務メリット 📈

  • のれん償却の必要がない
  • 純資産がそのまま引き継がれる
  • 合併後の利益率向上が期待しやすい
  • 簿外資産の発生可能性

一方で、パーチェス法では資産の含み益部分や個別のれん、結合のれんなどが資本剰余金としての合併差益として計上されるため、財務構造に大きな変化をもたらします。
持分プーリング法では、被合併会社の留保利益がそのまま維持されるのに対し、パーチェス法では留保利益が資本剰余金である合併差益に変換されるという根本的な違いがあります。これにより、企業の財務比率や将来の配当政策にも影響を与えることになります。

持分プーリング法廃止の国際的背景と理由

持分プーリング法の廃止は、国際的な会計基準の統一化という大きな流れの中で決定されました。IFRS(国際財務報告基準)や米国基準では、取得者が不明な企業結合は経済的合理性を欠くとの考えから、持分プーリング法の適用は認めず、パーチェス法に一本化されています。
廃止の主要理由 ⚠️

  • 会計基準のコンバージェンス(相互に比較可能な会計基準)への対応
  • 取得者不明の企業結合の経済的合理性への疑問
  • 国際的な財務諸表の比較可能性向上
  • 企業の永続性と株主権利保護の観点

FASBは米国会計処理方法「持分プーリング法」の使用を禁止しました。これは企業の永続性(Going Concern)と米国株主の権利を守り、市場の安定性、健全性を保つことに間接的に協力する立場から決定されたものと考えられています。
日本でも平成20年に「企業結合に関する会計基準」が改正されて、現在では廃止されています。持分プーリング法は帳簿価額を採用することから、国際財務報告基準や米国基準との比較において問題があるとされ、この流れは不可避なものでした。
現在では、すべての企業結合がパーチェス法(取得法)により処理されることになり、のれんの適切な評価と償却が重要な課題となっています。これにより、企業の真の投資価値と買収効果をより正確に反映した財務諸表の作成が可能になったとされています。