
事業基準とは、外国子会社合算税制における経済活動基準の一つで、外国関係会社の主たる事業が以下の事業に該当しないことを求める判定基準です。
事業基準で除外される事業分野:
これらの事業は、日本企業が日本でみずから行うことが可能なものであり、あえて外国に子会社を設けて行わせる積極的な経済合理性が見いだせないとされています。
例外規定について:
株式の保有業においては、統括業務を行う持株会社についての例外があります。また、航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国における事業の実体要件を満たすものについては、事業基準を満たすものとされます。
FX取引や投資業務を主たる事業とする場合、この事業基準に抵触する可能性があるため、実際の業務内容と経済合理性の詳細な検討が必要となります。
実体基準は、外国子会社が本店所在地国においてその主たる事業を行うために必要な事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していることを判定する基準です。
実体基準の判定ポイント:
注意すべきは、単純に固定施設を保有または賃借していればよいわけではなく、その主たる事業を行うに必要十分な施設であるかどうかが問題とされることです。
不適切な実体例:
人の活動を必要としないような金融資産の保有を主たる事業とする外国子会社が、たとえ形だけビルの一室を借りていたとしても、それは実体基準を満たしているとは言い難いとされます。
FX取引業務において実体基準を満たすためには、取引システムの設置、リスク管理体制、顧客対応機能など、実際の業務運営に必要な設備と人員配置が重要になります。
FX取引事業において事業基準と実体基準を満たすためには、単なる投資活動ではなく、実質的な金融サービス業としての体制整備が必要です。
FX事業で求められる実体要件:
国税庁の見解によれば、固定施設は単なる物的設備ではなく、そこで人が活動することを前提とした概念であるとされています。そのため、自動売買システムのみでFX取引を行う場合、実体基準を満たすことは困難とされます。
証明書類の重要性:
経済活動基準の各要件を満たしていることを証明する書類の保存が義務付けられており、税務当局から書類提出を求められた場合、指定期日までに提出できなければ要件を満たさないものと推定されます。
FX取引業者は、取引記録だけでなく、現地での人的活動、施設利用状況、顧客対応実績等を詳細に記録・保存する必要があります。
事業基準と実体基準に加えて、経済活動基準では管理支配基準も重要な判定要素となります。これら3つの基準は相互に関連し合っています。
管理支配基準の判定要素:
実体基準で固定施設があり従業員が働いていても、役員などの経営幹部が日本親会社を兼務して日本から遠隔で外国子会社の経営管理をしている場合は、管理支配基準を満たすことは困難とされます。
保険業における特例措置:
保険業を営む一定の外国関係会社から業務を委託された者が実体基準または管理支配基準を満たしている場合、その外国関係会社も実体基準または管理支配基準を満たすものとする特例があります。
FX取引事業においても、現地での独立した経営判断体制の構築が、実体基準と併せて重要な要件となります。
デジタル化の進展により、従来の物理的な実体要件の概念に変化が生じています。特にFX取引のようなデジタル金融サービスでは、新しい実体基準の解釈が求められています。
デジタル時代の実体基準:
国際税務の専門機関では、「社会や産業の5階層モデル」という概念が提唱されており、制度・体制層から自然法則・自然現象層まで、多層的な実体要件の検討が必要とされています。
新しい経済合理性の視点:
単純な物理的存在から、現地経済への実質的貢献度が重視される傾向にあります。FX取引事業では、現地投資家への教育サービス、市場流動性の提供、地域経済との連携などが新たな実体要件として評価される可能性があります。
今後は、従来の固定施設中心の実体基準から、デジタル経済に適応した包括的な活動実体基準への発展が予想されます。企業は、物理的要件に加えて、現地市場への実質的価値提供を証明できる体制構築が重要になるでしょう。
税務当局との継続的な対話を通じて、新しい時代に適応した事業基準・実体基準の運用指針を確立することが、FX取引業界全体の健全な発展に寄与すると考えられます。