
インターナル・モデル・アプローチ(内部モデル手法)における承認要件の基盤となるのが、金融機関による適切なモデル定義と特定プロセスです。
金融庁の「モデル・リスク管理に関する原則」では、金融機関が自社のモデル・リスク管理態勢におけるモデルの定義に基づき、管理対象とする「モデル」を明確に特定することを求めています。通常、第1線がモデルの特定に責任を負い、第2線がモデルの該当・非該当の最終判定に責任を負う構造となっています。
特に重要なのは、金融機関が使用する全てのモデルに対する包括的なリスク管理態勢の確立です。これには以下のような要素が含まれます:
外為市場においては、グローバル外為行動規範の原則に基づく適切な取引執行とガバナンス体制の構築が前提となっており、これらの要件と内部モデルの管理要件が密接に関連しています。
承認要件の中核となるリスクベース・アプローチは、モデル・リスク管理の実効性確保にとって極めて重要な概念です。このアプローチでは、金融機関が各々のモデル・リスクの水準に応じたリスクへの対応を図りながら、許容可能な水準までリスクを低減させることが求められます。
リスクベース・アプローチの具体的な実装には以下の要素が含まれます。
金融機関の一般的なプラクティスとしては、モデルの重要性と複雑性の軸を用いて評価する事例が多く見られます。重要性の高いモデルについては、より頻繁かつ詳細な検証が必要となり、これが承認要件の重要な判断基準となります。
また、モデル検証の実施頻度、深度、範囲などは、当該モデルのリスクの高低と整合的であることが必須とされており、承認プロセスにおいてもこの整合性が厳しく審査されます。
内部モデル手法の承認において、3線モデルによる管理体制の構築は必要不可欠な要件です。金融庁は3線管理の重要性を明確に掲げており、各防衛ラインが適切な役割分担を行うことを求めています。
第1線(ビジネス部門)の役割:
第2線(リスク管理部門)の役割:
第3線(内部監査部門)の役割:
特筆すべきは、金融庁が「実効的なけん制を確保するための検討が必要」としている点です。組織ごとに役割と責任の割り当てに違いがあることを考慮し、自社の規模や特性に応じた柔軟な対応が可能となっていますが、独立性の確保は絶対的な要件として位置づけられています。
承認要件において、モデルのライフサイクル全体にわたる管理体制の構築が求められています。これは単なる開発時の審査ではなく、継続的な管理プロセスとして位置づけられている点が重要です。
ライフサイクルの各段階:
各段階において、以下の文書化要件が課せられています。
また、モデル・インベントリーについては、「使用中のモデル、開発中のモデル及び最近使用を停止したモデルに関する一連の情報」を包括的に記録することが必須となっています。
近年の金融機関における第三者サービス活用の拡大に伴い、ベンダー・モデルの使用や外部リソースによるモデル検証についても特別な承認要件が設けられています。
外部委託時の主要要件:
金融機関にとって情報の制約という問題が残る部分ですが、自社のモデル・リスク管理プロセスに、これらの要素を適切に落とし込むことが承認の必要条件となっています。
監督当局のモニタリング強化により、外部委託であっても金融機関自身が最終的な責任を負う構造となっており、承認プロセスにおいても内製モデルと同等の厳格な審査が行われます。
特に、外部モデルの透明性確保と自社での理解度向上が重要な評価ポイントとなっており、「ブラックボックス」状態での使用は承認要件を満たさないものとして扱われるケースが増加しています。
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